日本の民家

森 清治郎(もりせいじろう) 1921-2004 1979(昭和54)年 麻布、油彩 162.0×227.0 平成18年度保管転換

日本の民家

日本の民家

解説

東京下町の建造物に続いて、ヨーロッパの街並みを描いた森清治郎が、最後に辿り着いたモティーフは滅びゆく日本の民家でした。古き良きものを絵筆に記録して後世に伝えようと、奈良・大和路をはじめ、信州や東北など全国各地を飛びまわり、個展でその成果を発表し続け“民家の画家”とさえ呼ばれるようになります。その集大成であるこの作品は、福島県南会津地方の隠れ里のスケッチをベースにしていますが、そのまま写し取ったのではなく、厚塗りの画面には作家の深い想いが込められています。つまり、この紅葉に彩られた山里に日本人に共通する“原風景”をあらわそうとしたのです。人々の心に安らぎと郷愁を呼び起こす暖かで揺るぎない存在感をめざして、じっくり時間をかけて取り組んだ力作です。(大野俊治)

略年譜

豊橋市に生まれる。昭和13年、愛知県豊橋中学校を卒業。翌年、東京美術学校師範科へ入学するが、左足の関節炎のため休学。昭和20年より同校に復学し、22年には紅土会に入会して寺内萬治郎の指導を受けた。昭和24年、東京美術学校を卒業。以後、光風会展、日展に出品。昭和29年に第40回光風会展で光風特賞を受賞し、会員に推挙される。当初は東京の古い街並みや建物に関心を寄せたが、昭和33年より欧州各地を取材旅行し、歴史を刻んだ堅固な建造物を重厚なマティエールであらわした。昭和42年からは日本の古い民家などを主題に取り上げている。平成4年、森清治郎展(豊橋市美術博物館)を開催。

この記事は 2014年02月12日に更新されました。

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