朝の雪道

広本季与丸(ひろもときよまる) 1908-1974 1948(昭和23)年 麻布、油彩 116.6×90.9 昭和57年度保管転換

朝の雪道

朝の雪道

解説

この作品は長いあいだ、豊橋市公会堂の階段を登り詰めたエントランスに掲額され、豊橋市民に親しまれていた作品です。宝飯郡形原小学校の講堂で開かれた個展で発表されたもので、朝日に照らされた雪道を行く木馬曳きの親娘がテーマとなっています。山から切り出した材木を二人が力をあわせて運んでゆく情景が描かれています。達者な技術と秀れた色彩感覚によって、光の反射を受けて浮かび上がる母親の顔や、頬を赤く染めながら後からサポートする娘の表情をリアルに捉えています。積もった雪をしっかりと踏みしめながら、黙々と働く北国の女性たちの我慢強くたくましい姿を見事に映しています。冬の陽を浴びた雪景色と人物や積荷との間に、光と影による柔らかなコントラストをつくり、息遣いさえ聴こえてくるような臨場感を醸し出しています。(大野俊治)

略年譜

蒲郡市に生まれる。兄の進、弟の森雄とともに画業を志した。京都で関西美術院に学んだ後、上京して太平洋美術学校に入学。1930年協会展や帝展・新文展、太平洋展などに出品し、昭和10年には第31回太平洋展で相馬賞を受賞している。堅実な技術を基盤に婦人像などを描いた。戦後は日展や創元会に出品。昭和40年には日展無鑑査となり、委嘱出品を続けるほか、創元会会員に推挙される。平成5年、蒲郡市博物館で郷土の作家(Ⅲ)「広本三兄弟展」が開催されている。

この記事は 2014年02月12日に更新されました。

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