桂川附近

島田卓二(しまだたくじ) 1885-1946
1917(大正6)年 麻布、油彩 80.5×116.8

桂川附近

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解説

黒田清輝に師事して書生となった島田卓二は、第6回文展に初入選を果たしました。以来、牛や羊をモティーフにした牧場や、東京近郊の自然をテーマにした風景画を、バルビゾン派の牧歌的な要素と外光派の明るい色彩をあわせたスタイルで描いてゆきます。この作品も初期東京時代の代表作で、ゆるやかに蛇行して流れる川の淵を覆い隠すようにせり出した木々の茂みが暗い影をつくり、それとは対照的に穏やかにひろがる河川敷や遠景の丘には、外光派の明るい色彩があふれています。風景画家としての確かな描写力が、樹木や水辺など随所にみられ、明暗のコントラストが画面にドラマティックな効果を与えています。島田は、関東大震災の翌年に家族とともに郷里に戻り、豊橋に定住しました。豊橋初の職業洋画家として活躍する一方、豊橋洋画協会の中心メンバーとして、当地の洋画振興に大きく貢献しました。(大野俊治)

略年譜

豊川市に生まれる。愛知県第四中学校を卒業。明治38年、上京して白馬会の葵橋洋画研究所に学び、黒田清輝の書生となる。大正元年、第6回文展に初入選。外光派風の明るい色彩で風物を描き、白馬会や文展を発表の場とした。関東大震災のため大正13年に帰郷し、豊橋で風景画の制作を続ける。大正15年、在郷の洋画家24名による豊橋洋画協会を結成し、以後同展に出品を続けた。和明・泰光の号で作品を発表している。

この記事は 2014年02月12日に更新されました。

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